南隊員が主役になるエピソードをもう一つだけ紹介して、
星になった池田さんに捧げたいと思います。
「ふるさと地球を去る」
建築中のマンションからコンクリートだけがものすごいスピードで宇宙に飛んでいくという奇怪な現象が発生。
MATの調査で、コンクリートは銀河系第三惑星のザゴラス星の引力で引っ張られていたことが判明、コンクリートに含まれる砂利は長野県あいの村産でした。
あいの村にマットジャイロで調査に飛んだ南隊員と郷隊員。
郷「あいの村です。人口が200名足らずと言っていました」
南「小さい村だね。俺の故郷によく似ているよ」
郷「長野でしたよね、南さんのクニ。腕白だったんでしょうね」
南「とんでもない。ガキ大将からは泣かされっぱなし。先生からは怒られっぱなし。『じゃみっ子、じゃみっ子』って、散々だったよ」
郷「じゃみっ子? なんのことですか」
南「蚕を知っているだろう」
郷「繭を作る、さなぎの?」
南「中には、繭を作らないさなぎもいるんだ。親から糸を吐くことを教えられなかった。誰からもかまわれない子供を、そう呼んで蔑むんだ。じゃみっ子…」
《場面が変わって》
南「誰とも、一度も戦ったことがなかったんだ」
郷「マットガンの名手、南さんからは想像もつかない話ですね」
南「ある日、村にクマが出てな。猟師のうちから猟銃を持ち出して、対決したことがあるんだ」
郷「なんでそんな無茶を」
南「俺が正真正銘の弱虫だったからさ。無茶ってものはね、逃げ場がないくらいいじめられ、追い込まれたものにしかできないんだ。逃げ場があるうちは、逃げ回れるからね」
郷「クマは射止めたんですか」
南「さすがに面と向かったら腰が抜けてしまってね。クマは猟師が射止めてくれた。だが、それで自信がついたんだ。やろうと思えば、クマとでもやれるという自信がな。それからいじめっ子たちも一目置くようになったよ、ハハハ」
ほんとに子供番組…?っていうぐらい深くありませんか?
てゆうか、これくらい深い内容が込められているのが日本のヒーロー番組なのです。
仮面ライダーV3を演じた宮内洋氏が述べてます。
「ヒーロー番組は、教育番組なんだ」と。
表面上のカッコよさだけを追求したとき、このジャンルは崩壊すると思います。
話を戻して。
あいの村の地盤は1万年前にザゴラス星から飛来した直径3キロの隕石の上にありました。
その隕石に含まれる放射性物質が、ザゴラス星の引力に引かれており、村には地震が頻発。
そして、隕石に含まれていた微生物が突然変異し、怪獣ザゴラスになります。
村全域に退避命令が出て、誘導するMAT。
混乱に乗じて六助はMATの前線基地からマットガンを盗み出し、逃げようとするいじめっ子たちと教師と対峙します。
「俺は逃げたりしないぜ。怪獣と戦うんだ。みんなついてこないなら、俺一人でもやるぜ」。
生徒たちから「じゃみっ子がマットガンを」と聞かされた南と郷は、六助を追います。
郷「こっちへよこすんだ。マットガンでなにをするつもりだ」
六助「怪獣と戦うんだ」
郷「お母さんが心配するぞ」
六助「母ちゃんは出稼ぎに行って村にはいない」
郷「お父さんは」
六助「父ちゃんは死んじゃった」
南「君は一人っきりなのか。それで…じゃみっ子か」
《マットガンを南に向ける六助》
南「弱虫だね…、君も。」
《視線をそらし、うなだれる六助》
南「友達からいじめられても、喧嘩なんか怖くてやったことがない。先生からは一度も褒められたことがなく、叱られてばかり」
《たたみかける南に、無言で涙を流す六助》
南「郷、この子に戦わせてやってくれないか。たぶん、生まれて初めて何かと戦おうとしてるんだ」
《そこに怪獣出現》
南「さあ、撃つんだ。撃て」

《そのうち村は宇宙に飛んでいき、郷はウルトラマンに変身、一件落着。六助の顔を両手で包み》
南「よく戦ったな。よくやった」
郷「ふるさとを失ってさみしくないかい」
六助「さみしくなんかありません」
南「ふるさとはなくしても、ふるさとで戦った思い出だけは一生忘れないよ。どこの地に移り住んでも、くじけそうになったら思い出すんだ。僕は昔、故郷で怪獣と戦ったことがあるんだってな」
《本来ならここでハッピーエンドになるはずが…。六助はマットガンに頬ずりするばかり》
六助「また起こらないかな」
《青ざめる南と郷》
六助「今度はもっと撃ちまくってやる」
《空に向かってマットガンを撃ちまくる六助。言葉を失う南と郷》
南「もうよせ」
《不服そうな六助。南とにらみあう》
南「もういいだろう」

こう言って険しい顔を緩ませると、六助は救われたような表情を浮かべるのでした。
幼いころの自分の姿と重なる子供に自信をつけさせてやりたいとの一心で、マットガンで怪獣と対決することを許した南隊員。
結果によっては責任も重大になってくる。それでも子供にチャレンジさせた。
なんと温かい心の持ち主なのでしょう。
しかし、そんな南隊員の思いとは裏腹に、
六助は間違った方向に自信をつけ、力を行使することに快感を覚えてしまった。
弱い心の持ち主にありがちな行動です。
虐待された人が自分の子供を虐待してしまう。
会社でも新人時代にいじめられると、職位が上がり部下を持ったときにまったく同じ行動に出てしまう。
そして部下から反発され、さらに互いに傷つけあう。
前向きなことは何も生み出さない愚かな行為です。
マイナスの感情は自分で決着しなければ、どこまでも連鎖してしまいます。
南隊員は怒りをみせることなく笑顔で六助を改心させました。
裏切られても人を許し、その人を苦しみから解放させてやること。
とても難しくてなかなかできないことだけど、とても大切なことなんですね。
これも南隊員、池田さんがその笑顔で教えてくれました。
合掌。
by akizuki
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